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マイジャーナル / 2004年1月〜3月
Non-Stop to Brazil with Ivan Lins!
Beach-Brazilこんにちは!
月日が経つのは早いものですね。この記事を書いていたら、また桜の季節を迎えました。つい一週間位前、近所にある丘の梅の花が咲き誇り、満ち溢れていました。朝の散歩でよく行く所で、いつもすがすがしい気持ちにさせてくれます。新しい生命の息吹きを感じさせられる、この生命感にあふれた花の色を見るにつけ、目の保養になります。

色の鮮やかさ同様、2004年地球の反対側サンバの地ブラジルへの音楽の旅は、私にとってまたひとつ大きな転換期を迎えました。今号ではブラジルツアーのすべてについてお話したいと思います。

長い旅を引き締める意味から、経由地のニューヨークに数日間滞在して、エネルギーチャージをする事にしました。零下15度という気温でしたが、ニューヨークという街はそんな日にホテルでじっとしているようなところではありません。ストリートを歩きたい気持ち余って、私は毛皮の襟巻きに耳当てや手袋を買い、いざ街に出かけました。シーズンではありませんが、今まで観る時間が無く、かなえられなかったミュージカルを思う存分楽しみました。「オペラ座の怪人」と「美女と野獣」です。もう数年も公演を続けているのに会場が完全に満員だったのには驚き感心しました。この驚きと興奮を考えるとうなずけます。その曲や素晴らしいアレンジを十分に堪能しました。そこはひとつの新しい探究心にあふれた音楽の世界がひろがっていました。出演者達のすばらしい技術と才能、そしてはち切れんばかりのエネルギーを目の前にして、私自身も力がみなぎってくるようでした。

Town-Brazil私はその後サンパウロへと飛び、一月の真夏の陽気に迎えられました。気温は 気持ちが良い27度で、湿気はなくちょうどよい気候でした。サンパウロといえば南アメリカ大陸のニューヨークといったところでしょうか、眠らない街としてブラジル国内からはもちろん、他国から大勢の人が集まり、様々なチャンスと生きる糧を求めてやってきます。世界第三位の大都市である事に付け加えて、南半球第一の資産都市でありまた経済の中心地として知られています。多様な文化が混在し、在外イタリア人、在外日本人の数は世界一だそうです。

ブラジルは様々な対照的なものが混在している土地で、訪ねる人にとってあらゆる感覚が刺激されるいわば冒険のようなものです。豊かな所ですが、同時に全くの不平等さも持ち合わせています。五つ星ホテルやリゾート施設が軒を連ねているかと思うと、一方で掘っ立て小屋の集落があちらこちらに見られ、またショッピングモール、マクドナルド、世界的な大手銀行が立ち並ぶ街角では同時に小さな屋台の出店が見られ、手作りの食べ物や薬草が売られています。混在する様々な文化、宗教、そして多様な地形などが、この暖かい国をまさに異文化のショーケースとしているのかもしれません。このユニークな街で私は出来る限り多くを取り込み、そしてエギゾチックで多種多様な色、リズム、エンタテイメントの共存に身をゆだねるようになりました。

到着一日目がレコーディングの第一日目でした。サンパウロの郊外にあるザ・アート・ミックス スタジオは大きな建物で、外からみると倉庫といったところですが、中はとても綺麗でモダンです。セキュリティーを考え、わざと正面を殺風景にしている多くのニューヨークのスタジオを思わせるようでした。スタジオの中が気になりましたが、音を聴いてすぐに気に入りました。

studioここで私は、このプロジェクトの実現に向けて手助けをして頂いたブラジル出身で共同プロデューサーであるオズニー・メロ氏とパウロ・ゴメズ氏の中に加わりました。三人共人生の大半を日本と深い関わりあいを持ち、今回運命的に一緒に仕事をする事になり、興味深いものになりそうです。そして二人は、イヴァン・リンズ氏との掛け橋役ともなってくれました。イヴァン・リンズは1989年のアルバム「Love Dance」をはじめて聴いて以来私の大のお気に入りで、アメリカではアントニオ・カルロス・ジョビンの後イヴァン・リンズほど注目された人はいません。これは彼のジャズやポップミュージシャンの友達がその才能を認めそして彼の曲を取り上げてレコーディングしたからに他なりません。(クインシージョーンズ、ジョージベンソン)

まさか私自身のアルバムで彼のナンバーを歌えることができるとは思いもかけなかったのですが・・・「チャリートとイヴァンの共演!」こんなことを考えるだけでも鳥肌が立つ思いです。彼の作曲した中から特に気に入っているものを注意深く選ぶようにしたのですが、あまりにも多くてとても難しい作業でした。イヴァンの音楽は、ロマンティクなメロディ、ジャジーなハーモニー、それにブラジルのポップがとてもうまく組み合わされていて、私の音楽にもとても大きな影響を与えてくれておりました。

アルバムのアレンジの基本として、伝統的ボサノバからファンキーなモダンサンバといった様々な様式を包括するようなラテン音楽のコンセプトで仕上げ、ジャズのエッセンスをも加える、というものでした。 ブラジルの音楽はその多様性が特徴で、常に周りの三大陸から影響を受けながら、ブラジル独自の新しい独特なものをいまだに生み出し続けています。サンバはスペインのボレロにアフリカ特有の抑揚とリズムが加わって形成されてきました。一方でアストラッド・ジルベルトによって歌われて知られている「イパネマの娘」に代表される、より落ち着いたボッサノヴァは、北アメリカのジャズの影響を受けたものです。今回のアルバムはこういった様々な要素が混じりあったもので、選曲はこれらの音楽的影響を映し出せそうで、私が長年好きで温めていたナンバーです。 今回のレコーディングセッションはメンバー全員にとって素晴らしい体験となり、多くの有能なミュージシャン達が参加して腕をふるってくれました。アルバムの中身はまさに心への癒しとなるでしょう。

cafe殆どの時間をスタジオ内で過ごした私ですが、いただいた色々な料理は素晴らしい息抜きとなりました。サンパウロというブラジルきってのグルメの中心に滞在していながらレストラン話をしないわけにいきません。この街は何しろ様々なすばらしい食べ物にあふれています。―パッションフルーツとパパイヤから、大河からの巨大淡水魚、海の蟹まで― この自然が与える豊かな恵みは、世界中からやってくるシェフたちにブラジルの伝統料理に新たな趣向を凝らす気持ちを起こさせます。 サンパウロでは最高レベルのサービスと料理の美味しさを体験でき、またそれは国際的な料理として十分誇れるものです。 何しろ私はすぐにブラジルスタイルのバーベキュー料理であるシュラスコの虜になりました。元来これはブラジルの南方に住むガウチョやカウボーイ達の昔からの主食だったようで、そこからリオデジャネイロやサンパウロに伝わりました。最近になってからシュラスコが流行るようになり、今日ではブラジルのあらゆる都市、及び世界中のあちらこちらで素晴らしいシュラスコ専門レストランが見られるようになりました。 これらシュラスコ専門料理店は「シュラスカリア・デ・ ロディジオ」と呼ばれ、ウェイターが色々な種類の肉串をもって各テーブルを回り、食皿の上に食べられる分をスライスしてくれます。肉はブラジルソーセージ、牛肉の様々な部位、ブタヒレ肉や鶏肉などですが、特筆すべきは一緒にいただいた「カイピリーニャ」という飲み物。この飲み物はサトウキビを蒸留した「ピンガ」というお酒から作られるラム酒のようなもので、とても美味しかったです。

statueレコーディングが終了する頃に向けて、アルバムのカバー写真を撮るためにリオデジャネイロに飛ぶ素晴らしい機会を得ました。ここでの滞在も一つの忘れられない体験となりました。夜でも昼でも飛行機でリオを訪れるその眺めはすばらしく、「ワンダフルシティ」として知られるのも納得できます。山と海の間にたたずみ、その壮大な海岸線には小さな湾やきれいな砂浜、そして小さな島々が点在しています。それが有名な観光スポットで、コルコバド山にはあの有名なイエス・キリスト像がリオの象徴として街を見下ろしています。そのパノラマの様な眺めは、それは素晴らしいものでした。

息をのむような美しい景色で写真を撮ろうと私はカメラマンとメイクアップスタイリストと一緒に色々な場所に移動しました。あの素晴らしい景色はみていると創造力がかきたてられるようで、事実ほとんどの有名観光スポットにはそれに因んだ歌があるということは不思議ではありません。リオデジャネイロは音楽の魂があふれる街で、まさにサンバとボサノバがそこで生まれた事に納得させられます。数個のマッチ箱と、砂の入った缶があるだけで、十分リオでの音楽の暮らしが始められるのです。週末や祝日には街角のバーでミュージシャン達が何気なく演奏しているのを見かけるのですが、伝説によると、あの「イパネマの娘」もこのような場で生まれた歌だそうです。

音楽的にはもちろん色んな意味で私はブラジルで素晴らしい時間をすごしてきました。この「ブラジルハイ」ともいえる高揚感からしばらく抜け出せずにいたのは言うまでもありません。7月7日にリリースされる「ノンストップ・トゥ・ブラジル」と銘打つこのニューアルバムは、きっと気に入ってもらえると思います。

チャリート    

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